新しい職種への転職で得たものと失ったもの

20代最後の年、これまでの自分の生活について考えてみましたが、仕事にばかり時間を費やす、満足のいくものではありませんでした。もっと充実したプライベートを過ごすために、8年続けた飲食業を離れて、一般企業での事務職へと転職することにしました。

異業界への転職の動機

服飾の専門学校に通っていた頃、飲食店でのアルバイトをしていました。デザイナーになりたいという夢があったのですが、飲食業のおもしろさに取り付かれ学校卒業後は飲食店舗の企画会社に就職することとなりました。8年の間にいくつかの会社を転々とし、最終的にはディレクターという役職を任せていただくほどになりました。

しかし20代最後の年、今までの自分、また自分のこれからのことについてふと考えてしまいました。飲食業界での仕事はとても充実しており、やりがいを感じていたのですが、何か物足りなさを感じました。毎日が仕事中心の生活で、プライベートの時間を満喫したという記憶がほとんど無いのです。飲食業はとても拘束時間が長く、就業時間は不安定です。お店には定休日が無く、繁忙日となる週末やクリスマスなどのイベント時には必ず出社となります。またお店での接客以外にも、計数管理などの事務作業を抱えていたため空いた時間は事務仕事に費やす毎日。そのため、仕事の後に友達と食事にいったり休日を誰かと過ごしたりと、空いた時間を自分のために遣うことは出来ませんでした。

改めて自分の人生について考えてみると、あまり上手に生きているとは思えません。このままではいつか後悔するだろう…そう思った私は、30代からはもっとプライベートの時間を作れるように思い切って飲食業界から離れてみることにしました。

転職をして良かった点

プライベートの時間を確保するため、就業時間や休日が固定されていて残業が少ない、一般事務の仕事に転職しました。事務職は初めてだったため、慣れるまではいろいろとたいへんでしたが、1ヶ月もすると、自分で作業スケジュールを調整出来るようになり、計画的にプライベートの時間を持てるようになりました。お休みは基本的にカレンダー通りとなるため、旅行に出掛けたり友達とゆっくり食事に出掛けたりと、仕事とプライベートにメリハリがでてきました。じっくりと物事を考える余裕もできたので、視野も広くなったように思います。

悪かった点

接客という人と接点を持つ仕事をしていた私には、残念に感じる部分もありました。飲食店での仕事はチームワークがとても大切です。どのお客様に対しても同じ味、同じサービスを提供するためには調理スタッフやホールスタッフ関係無く、全スタッフでの協力しあうのは当然のことでした。

しかし企業ではそれぞれが自分の仕事に没頭し、他のチームや部署には無関心です。すべてをマニュアル化し、それだけをやっていればいいという状態なのです。お客様が満足のいく商品やサービスを提供するという目的は同じかもしれませんが、そこにたどり着くまでの工程が多く、細かく作業分担されています。各従業員は自分に与えられた作業を黙々とこなし、その作業が無事に完了したか否かで評価されるため、他の人たちがやっていることには無関心になってしまいます。

その結果、会社全体での最終目標を意識している人はほとんどいません。接客業では、目の前にいるお客様の反応から、私たちに対する評価がすぐにわかるため従業員は常に仕事の目的を意識していました。そんな環境で長く働いていた私には、仕事にやりがいを感じることが出来ませんでした。

異業種転職の心構え

自分の生活に足りなかったものを補填するための転職だったのですが、その代わりにやりがいを失いました。業界によって仕事の取り組み方は違いますし、それによって自分の考え方も変化させなければなりません。今までの自分のやり方が通用しないことは多々あります。異業界への転職は、自分の経験を一度リセットし、ゼロからのスタートであるということをしっかり理解しておくことが必要だと思います。自分が何を求めているのかを、より真剣に考える必要があったのではないかと反省しています。今になっては、飲食業界に居ながらも、働き方を工夫すれば仕事とプライベートをもっと上手く両立できたのではないかと思いますが、この転職はいろいろな面でよい経験となりました。